2011年6月27日月曜日

放射線への誤解が差別や偏見を生む

南相馬市の現状について話す及川副院長(手前)
 南相馬市立総合病院の及川友好副院長は当直や手術という医師の役割を果たす一方で、市内の小中高校の被ばく線量を計測して情報提供にも努めている。「この町では自治体も被災者。自治体の職員は約8割の苦情の電話を1カ月以上受けて精神的にもまいっている。線量計で測定する仕事は本来行政の仕事かもしれないが、余力がある人がやるしかない」。市全体のマンパワー不足も相まって、及川副院長自身、激務が続く。
 
 岩手県や宮城県と同じく甚大な津波被害を抱えているものの、医療の提供や情報伝達という支援を「放射線への誤解」が阻む現状がある。ここ数カ月、国の放射線量の基準が二転三転する中、住民たちは振り回され不安にさらされてきた。さらに周りの市町村や県外の人たちは南相馬市に近づくことを恐れ、福島ナンバーの車の出入りを拒絶した。

 「いじめられっ子の気持ちが分かった」。及川副院長はぽつりとつぶやいた。震災以降、原発から離れた市町村や福島県外で、放射線を過度に怖がるあまり、差別や偏見を生み出した。被爆地長崎や広島でも同じような問題を抱えた歴史がある。「被爆した若い娘は結婚できない」「放射線がうつる」などという誤解が多くの被爆者を奇異の目にさらした。

 いったい私たちは苦い経験や歴史から何を学んでいるのだろうか。


 河野病院長は金澤院長と及川副院長に窮状が届いていないことを伝えた。「全国の医師や国の目は岩手や宮城に向いており、福島に向いていない。南相馬市のこんな状況を知らない人がほとんど。実際に来てもらって見てもらうべき」。