2011年4月4日月曜日

誤嚥性肺炎を防ぐ 避難所で歯科診療

お年寄りの歯科診療をする齋藤教授
「ここは痛くない?」。耳元に顔を寄せて、ゆっくりお年寄りに話しかける長崎大学病院の齋藤俊行教授(予防歯科)。地域の歯科医療を支援するため、南相馬市内の原町第1小学校の避難所を訪れた。

この小学校は福島第一原発から20km〜30km圏内にある唯一の避難所で、お年寄りが大半。ほかの避難所は30km圏外にあり、若者や子供たちの多くが利用しているという。避難所では段ボールで仕切られたスペースに布団や毛布を敷いて、避難生活を送っている。

水蒸気爆発が起きた3月12日を境に、妻と避難所で生活している81歳の男性は入れ歯の不具合を訴えた。「入れ歯に付いた菌をこうやってきれいに落とさんと、肺に入って肺炎になるよ」。齋藤教授が入れ歯を洗いながら説明すると、「ほぉ」と深くうなづいた。

1995年の阪神大震災では多くのお年寄りが口の中をきれいに保てず、あやまって肺に菌が入り込み誤嚥性肺炎で命を落とした。

この日、齋藤教授は9人を診療。診療を南相馬市の保健師や歯科衛生師がサポートしているが、ニーズは未知数だ。「先生お一人では限界がある。入れ歯を洗ったり水を変えたりするのにどうしても手間がかかる。どうにかして体制を考えたい」。診療後のミーティングで保健師が言った。