2011年4月5日火曜日

「長崎からやってきました」 在宅診療で安心を与える

地元の保健師や自衛隊と協力して在宅医療に取り組む長崎大学病院チーム
巡回して安心を与える
「食事はちゃんと取られていますか?」。長崎大学病院の鉦打健看護師は話しかけた。
「はい。自分でやっています」
「食材はどうやって?」
「冷蔵庫にあるものを探し出して食べています」
脳梗塞の後遺症が少し残る80歳の女性はこう言った。歩くのもゆっくりやっとだが、健康状態はいいようだ。

南相馬市で在宅医療がスタート。長崎県医師会と福島県立医科大学の3チームに分かれて、地元の保健師や自衛隊とともに巡回している。


「ここは30km圏内で誰も来てくれないけど、先生たちはわざわざ長崎からやってきてくれたんだよ。ありがたいね」。南相馬市の保健師、大石万里子さんは女性の背中をさすり、声を詰まらせてこう言った。女性はうっすらと涙を浮かべた。


緊急搬送するような事態にはまだ出会っていない。しかし地震を機に、介護サービスがぷっつり途絶えた。医師たちも少しずつ戻りつつあり、4月4日から3件の民間の病院が外来の診療を開始した。今、必要なのは在宅での介護サービスを支援するマンパワーなのかもしれない。

それと「安心感」。「だれも来てくれないのではないか」「見捨てられたのでは」という不安があるようだ。女性の涙がすべてを語っている。


診察が終わりかけたころ、女性が庭を指差してこう言った。
「水仙が2つほど咲いたんですが、外に出てもいいですか?」と。
安岡副院長は「何時間も外に出ることは勧めませんが、庭先に少し出るくらい大丈夫です。我慢している方がむしろお体に悪い。気晴らしに草むしりしてもいいですよ」と明るく笑顔で話した。